読みました。久しぶりの表紙買いです。
『ドグラ・マグラ』を読んでいる途中でしたが、大変読みにくいので、読みやすそうなこちらに逃げてきました。『ドグラ・マグラ』は読み進めるのが大変なだけでかなり面白いので、ちゃんと全部読みたいと思います。
ちなみに、
コーヒーこぼしてうにょんうにょんになりました。悲しい。
以下、感想にネタバレを含みます。
アメリカの名門音楽学校の風変わりな試験、音楽家の父を探すためにその試験を受ける日本人の少年、周囲で起こる事件、かつて父と親子のように過ごした女性、父の残した特殊な楽器、彼らの背後に渦巻く陰謀、他の受験者たちと育む友情、音楽の深遠への追求。
という感じの話でした。
ちょっと詰め込み過ぎでは。
それぞれの要素は魅力的に感じられるけれど、どうも1つ1つがぼやけてしまった感が否めない。
試験と事件と音楽とそれぞれのキャラクターをリンクさせるために、細部の展開が犠牲になっている感もある。それいる?みたいな描写が挟まったり、重要キャラっぽいやつが雑に死んだり、そうかと思えば重大局面で唐突に知らん奴が出てきたり。
全体的な雰囲気はねー、いいんですよ。SF的なガジェットとか科学とファンタジーの中間っぽい陰謀論とかは好きだし、キャラクターどうしの会話にも味がある。各キャラクターの背景を描くに当たって、「何が好きか・嫌いか」に強く焦点を当ててモノローグしていくのも個人的には好みです。
でもねー、設定と人間を大量に出しすぎてて、描写しきるのに苦労しているように見えるというか。全部見せなくてもいいと思うんですよ。
僕はこの物語のテーマは、「友情・愛情の力」と「人々の間で『自分』を見つけること」を描くことであると感じました。
一方で、解説の人は「音楽とは何か」「音楽の深遠に到達しうるのか」がテーマであるというように述べています。
たぶん、「青春」だと言う人も「ミステリー」だと言う人も、「音楽の力」だと言う人もいるでしょう。
これらがすべて盛り込まれている、豊かな小説であるということもできますが、主題がブレているということもできます。どちらに受け取るかは、好みの問題かもしれません。僕はどちらかといえば後者でした。
やや批判的に書きましたが、なかなか楽しく読めました。音楽という馴染みのない分野がSF・ミステリー的に描かれていたのも新鮮でした。前にも書いたとおり、キャラクター描写も好みでした。やや冗長には感じましたが。
というわけで、表紙と1ページ目だけ見て衝動買いした割にはそこそこ満足です。宮内悠介さんの本はもう少し読んでみたいと思います。ただ、とりあえず次はブックオフで探すかな、という感じです。