#名刺代わりの小説10選 というハッシュタグが Twitter にあったので,自分でも選んでみました。選んだのは以下の10作品。
球形の季節/恩田陸
— muno@本と山 (@muno_blog) 2019年11月4日
哀愁の街に霧が降るのだ/椎名誠
図書館戦争/有川浩
星を継ぐもの/J・P・ホーガン
オオカミさんと七人の仲間たち/沖田雅
氷菓/米澤穂信
恋文の技術/森見登美彦
虚無への供物/中井秀夫
ハーモニー/伊藤計劃
紙の動物園/ケン・リュウ#名刺代わりの小説10選#名刺がわりの小説10選
それぞれについて,選出理由とか思い出とかを簡単にまとめてみたいと思います。作品の並びは,自分が読んだ大体の順番に沿っています。
球形の季節 / 恩田陸
恩田陸から 1 作品。確か,中学時代に読んだ本です。
正直に言うと,内容は全く覚えていません。けど,恩田陸作品の中で一番印象に残っているので,この本を選びました。『夜のピクニック』から恩田陸に入って,この本で決定的にファンになりました。そうは言っても,恩田陸の作品をすべて読めているわけじゃ全然ないんですけど。
最近読んだ『三月は深き紅の縁を』および『麦の海に沈む果実』と悩みましたが,これらは 2 冊セットで選ぶべきだと思ったのでこっちに。10 作品しか選べないので,同一作者の作品は 1 作のみ選出することにしています。
哀愁の街に霧が降るのだ / 椎名誠
椎名誠のエッセイから,『哀愁の街に霧が降るのだ』。友人たちと下宿で共同生活をしていた椎名誠の青年時代の話で,私小説に近いかも。これも中学生の頃に読んだと記憶しています。
椎名誠には,国語の教科書に載っていた『続・岳物語』(の一部である『風呂場の散髪』)で出会いました。最初に『岳物語』を読み,デビュー作の『さらば国分寺書店のオババ』を読み,学校の図書室で『あやしい探検隊』シリーズを一通り読み,次に読んだのが『哀愁の街に霧が降るのだ』だったと思います。椎名誠の軽薄さと陽気さと物悲しさが同居した文章がすごく魅力的で,特に青春時代のどうしようもない感じがよく表れているこの作品が一番好きです。他の作品だと,『新橋烏森口青春篇』もよかった。
図書館戦争 / 有川浩
有川浩作品は全般的に好きなんですが,その中でも一番代表作っぽいこれを。『図書館戦争』単品というよりも,シリーズ全体ということで。
『旅猫リポート』の感想にも書いたけど,有川浩の作品には鼻につく部分もめちゃくちゃ多くて,嫌いな人の気持ちもすごくわかるんだけど,未だに好きなんです。この人の作品の構造は,基本的に「スカッとジャパン」に似ていると思っていて(あんまり観たことないけど),作者の信じる正義を押し付けられている感じが強いんだと思っています。だから,読むときは頭の中を「有川浩を読むモード」にしてから読んでる。
『図書館戦争』シリーズは,このちょっと押し付けがましい正義によるウザさと爽快感,そして恋愛要素が,一番ちょうどいいバランスで成り立っているような気がしています。
他に好きなのは,『キケン』とか『植物図鑑』とか。中学生後半〜高校生にかけて読みまくっていました。
星を継ぐもの / J・P・ホーガン
世界的にも有名な名作 SF。父親に勧められて読んだ作品です。
月面から出土した謎の死体から始まる,超科学的なミステリという感じの物語。そもそも設定の発想がものすごいんだけど,その真実を暴くに至るまでの考察があまりにも緻密で,読んでいてワクワクする。
全人類に読んでほしい作品の 1 つです。
オオカミさんと七人の仲間たち / 沖田雅
ライトノベル枠ということで。これも,『オオカミさん』シリーズ全体で 1 作品にしてください。
高校時代に,友達に勧められて読みました。ゴリゴリにラノベっぽいラブコメです。主人公が一途でちゃんとかっこいいのと,デレてきたヒロインといちゃつきまくるのがよい。
ラノベ枠としては,『涼宮ハルヒ』シリーズや『とらドラ!』シリーズとも迷いましたが,「名刺代わり」ということなので一番自分の趣味が出ているこの作品にしました。
氷菓 / 米澤穂信
これは割と迷いました。米澤穂信から 1 つ選びたかったんですけど,『王とサーカス』『儚い羊たちの祝宴』あたりも候補に上がって。けど,やっぱり『古典部』シリーズを一番楽しみに読んでいるので,『氷菓』にしました。
これも,『氷菓』そのものというよりは『古典部』シリーズ全体というほうが正確ですね。シリーズ全体で一番好きな 1 冊を選ぶなら,『クドリャフカの順番』か『いまさら翼といわれても』かなぁ。
推理小説としての緻密さと,高校生たちの不安定さがない交ぜになってるのが魅力的です。
恋文の技術 / 森見登美彦
森見登美彦から 1 冊選ぶなら絶対にコレ。
確か,『夜は短し歩けよ乙女』のあとに読んだのがこれだったと思います。高校時代だったかな。
『太陽の塔』とも迷ったけど,僕がほわほわした恋愛小説が好きなのでこっちにしました。『夜は短し』や『四畳半』ほど荒唐無稽な話ではなく,普通に冴えない男の普通の恋文という感じ。愛おしくて大変よいと思います。
森見登美彦の言う「おっぱい」は僕らの言う「おっぱい」と決定的に違って聞こえるのはなんなんでしょうね。
虚無への供物 / 中井秀夫
ここからは,大学院に入ってから読んだ小説です。学部生時代に読んだ本は 1 冊も入りませんでした。そもそも読書から離れていたし。
『黒死館殺人事件』,『ドグラ・マグラ』と並ぶ,日本ミステリ界三大奇書の 1 つ。と言っても,他の 2 つはまだ読んでいません。『ドグラ・マグラ』は持っているんですが,あまりの奇書っぷりに 1/4 くらい読んだところで挫折しました。いつか再挑戦します。
怪事件に対してミステリオタクたちが好き勝手に意味わからん推理を展開しまくった末,最終的にそれが全部ひっくり返される,というような話で,アンチミステリとも呼ばれる種類の小説なようです。かなり読みにくいし,全部を理解できたとも思えないけど,圧倒された。
いつかもう一度読み返してみたい本の 1 つ。
そういえば,このブログを作って一番最初に感想を書いた本でもありますね。
ハーモニー / 伊藤計劃
寡作にして夭逝された伊藤計劃の第 2 作目。デビュー作の『虐殺器官』のほうが有名なように思いますが,個人的には『ハーモニー』のほうが圧倒的に好きです。
ディストピア風の世界観の深い掘り下げと,人間の身体や意識に対する思索に,共感させられ,屈服させられました。『虐殺器官』のほうがサスペンス的で,エンタメとしては優れているかもしれない(例えば,映像として映えるのは『虐殺器官』だと思う)けど,『ハーモニー』のほうが一緒に考える楽しさがありました。
オリジナルの作品として完結しているものがこの 2 つしかないことが本当に残念。
紙の動物園 / ケン・リュウ
最後は,1 ヶ月くらい前に読んで感動させられた『紙の動物園』。この 10 選に挙げた中では唯一の短編集です。
7 つの短編が収録されているけど,中でも『心智五行』が素晴らしかった。
全体を通じて,アイデアの料理の仕方がエレガントだなという印象を受けました。核になっている設定も,最近の学術研究を元にしたりしていて面白い。
#名刺代わりの小説 10 選 に選んだ本については以上です。
近いうちに,入れようか迷って落とした作品についても書きたいと思います。