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小林多喜二『蟹工船』 -これ現代の話では?

ずっと読んでみたかった『蟹工船』をようやく読めました。

きっかけは kindle を購入したこと。青空文庫で,著作権切れした過去の名作を無限に無料で読めるのは大きい。どこでも無料で暇つぶしができてしまう。最強か?

そういうわけで読んでみたところ,思ったよりカジュアルに読めました。古い作品ですが特に読みにくさとかもないし,悪趣味な感じで面白かったです。

 

『蟹工船』といえば,「おい,地獄さ行くんだで」という書き出しが有名ですね。

『蟹工船』は1920年代に発表され,「蟹工船」でこき使われる労働者たちの群像劇が描かれています。「蟹工船」はカムチャッカ半島の沖合いで蟹をとりまくるための船で,法律上は船でも工場でもなかったために法の抜け穴となり,労働者たちが非人道的に酷使されていたといいます。

本作の前半では労働者たちが痛めつけられる様子がひたすら描かれ,後半になるにつれ彼らが闘争へ転じていくことになります。

 

個人的には,労働者たちが生かさず殺さずでゴリゴリに痛めつけられているのが,悪趣味な「ブラック現場リポート」という感じで面白かったです。

 一方で,労働者たちの闘争にはそれなりにカタルシスを感じることができるのかなと思って読み進めていましたが,その期待はやや裏切られました。そういう作品ではないのでしょう。主人公という主人公はいないし,そもそも登場人物たちは個人としてというよりも「労働者」の1人として扱われているので,物語としての面白さはあまりありません。

良くも悪くも,「ブラック現場リポート」以上でも以下でもないという印象です。

 

本作では,「使用者に酷使される集団としての労働者」と「労働者を虐待して服従させる中間管理職としての使用者」の対立が描かれ,その背後に「労働者から搾取することで私腹を肥やす資本家」 の存在が言及されていますが,現代でもその構造は大して変わっていませんね。ブラック企業とか言われている職場は,「蟹工船」と似たようなもんなのでは。そりゃ,直接的な暴力や虐待こそないでしょうけど。

資本主義の宿命なんでしょうか,それとも日本人の特性なんでしょうか。

 

こういうことを知識もないのに細々書くと,バカがばれるのでこの辺でやめておきます。

 

月並ですが,搾取される労働者にも,痛めつける使用者にも,金を動かすだけの資本者にも,なりたくないなと思いました。

力のある労働者になりたいものですね。

 

蟹工船

蟹工船

 

 

 

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

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