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青崎有吾『水族館の殺人』 -期待通りだけどちょっとずるくない?

『体育館の殺人』の続編。高校生たちが主要登場人物を占める、雰囲気軽めの現代風本格ミステリという感じで、前作は結構好きだったので期待していました。

『体育館の殺人』の感想は↓ 

www.i-think-i-can.net

 

前作を読み終わった時点でシリーズ化されていることは知っていたので、『水族館の殺人』はずっと探していたんだけど、なかなか見つけられずに1年半以上開いてしまいました。

ちょうど最近 kindle を購入したので、諦めて電子版を買って読むことに。思えば、自分にとって『体育館』は電子書籍デビュー作だったので、このシリーズは電子で読む運命なのかもしれない。

当時の感想を読むと、「お金出して買うなら絶対に紙」と書いているので面白いですね(『体育館』は prime reading で無料だった)。

電子書籍について1つ言えるのは、「読者への挑戦」があるタイプの推理小説は電子で読まないほうがいいということですね。読み直しにくいから。 www.i-think-i-can.net

  

まずは簡単に感想を。

普通に面白かったです。期待を超えてはこなかったけど期待通りという感じ。

読み口を軽くしながらも、本格ミステリとしてうまく成立していてすごいなと思いました。謎解きもきれいなので読んでいて気持ちいいです。

一方で、登場人物のキャラクター性が微妙なのも前作と同じ。本格ミステリとしてもキャラクター小説としても読める、というのを売りにしているように思うんですが、後者とはイマイチ成功していない気がします。解説ではその部分も絶賛されてるけど。

一作で完結するように書かれた『体育館』よりキャラクターが掘り下げられているのは確かなんですけど、1人1人に与えられているキャラクター性が過剰かつステレオタイプなので痛さや上滑り感が強くて個人的には好きになれません。

ラノベ的・オタク的な要素を取り入れようとして失敗してしまったような印象。

好きじゃなかった部分のほうが長くなっちゃいましたが、最初に書いたとおり、全体としては面白かったという感想です。ミステリはトリックと謎解きが良ければそれでいいんです。キャラはおまけ。

 

ただね……。

ちょっとずるくない?

という感想も残りました。

前作に引き続き、今作でも解決編の前に「読者への挑戦」が挟まっていました。そこで今回は、本気で謎に取り組んでみました。しかし、全編読み直して、結構時間も使ったものの、結局答えにはたどり着けず。悔しいけど探偵役の謎解きを聞かせてもらいましょうか、と解決編を読み、論理展開には納得しました。

ただね……。

ちょっとずるくない?(2回目)

というのも、捜査パートでの探偵役のリアクションが、ことごとくミスリードを狙っているように見えるんです。

本作では、探偵が重要な手がかりにたどり着くシーンで、「待てよ……。そうか……!」的なリアクションが入り、推理が進展したことが読者に提示されるようになっています。なので、読者としてはこれらのシーンで重要な情報が示されていると考えて「挑戦」に挑むことになるんですが、これらの場面で得られる情報は基本的に、「推理を進めるための情報」ではなく「探偵がそれまで有力と考えていた推理(読者には未提示)を棄却するための情報」なんです。

ある場面で推理が進んだ様子が描かれてた場合、その場面が鍵になると考えるのが自然に思います。しかし実際には、それまでの推理の誤りに気が付き、再検討した結果として別の推理にたどり着く、という思考が「待てよ……。そうか……!」の水面下で展開されていたのです。

わからねぇて。

まあ、確かに推理に必要な情報はすべて提示されているので、読者が正解にたどり着くこと可能なんですけどね……。

ちょっとミスリードするような書かれ方が多かったように感じたので気になりましたが、僕の頭が足りなかっただけかもしれません。ほぼ負け惜しみ。

「読者への挑戦」をクリアできた人がいたら教えてください。

 

感想は以上です。

次の『図書館の殺人』も読むと思います。ここまで電子で読んじゃったから次も電子かな……。

 

 

水族館の殺人 (創元推理文庫)

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体育館の殺人 (創元推理文庫)

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